『復刻版 第三の書く』

青木幹勇(2020)『復刻版 第三の書く』東洋館出版

*初版は1986年。1992年の第8刷を底本としている。

副題にもある「読むために書く,書くために読む」を実践するための本。タイトルの第三の書くは,第一の書くである「書写」,第二の書くである「作文」とは異なる「書くこと」を示している。例えば,メモを取ったり,話す前に概要を書いておくと言ったことから,読んだものから書き抜いたり,書きまとめたりと,多彩な書く活動を含んでいる。

非常に面白く読んだのは,「2.「書くこと」は嫌われている」で示される,書く指導を嫌う人々への反論である。8点が挙げられているが,それぞれへの反論はどれも耳が痛い。また,「3.「第三の書く」の展開」では視写の重要性について述べている。視写は板書した文章をノートに書き写させることで,文章を書くことに慣れさせるとともに,筆速を向上させる指導である。ノートテーキングの前段階での筆速の重要性は英語の授業でも感じるところである。

さらに,本書では,発問について,その効果への限界を知るべきであり,安易な発問だけで授業を展開するべきではないと繰り返し強く述べている。その代わりに,「書替え」を勧めている。これは,例えば,物語文では読者が登場人物の一人となり,その登場人物の視点で物語を書き替える指導である。この書替えのためには,物語に入り込み,よく読み,また書かなければならない。つまり,「書くために読む」ことをしなければならない。

全てが英語の授業に右から左に使えるわけではもちろんないが,応用できる指導のアイディアは少なくない。それ以上に,言葉を教えるものとして,安易な方法に走らず,試行錯誤を繰り返し,「多彩な指導法の創造的な開発」をすべきであるという姿勢は忘れてはならないものだろう。

目次

  1. 国語科における「書くこと」
  2. 「書くこと」は嫌われている
  3. 「第三の書く」の展開
  4. 書くことの多角化
  5. 「第三の書く」と発問
  6. 文学教材における「第三の書く」
  7. 説明的文章における「第三の書く」
  8. 伝記教材における「第三の書く」